ネットで繋がり広がります。”尺骨神経麻痺”でお悩みの皆さんへ。

尺骨神経前方移行術

私の受けた手術は「尺骨神経前方移行術」です。普段は上腕骨の肘部管という尺骨神経溝や靭帯で出来たトンネルを通っている尺骨神経を遊離させて肘の前方に持ってくるという手術です。基本的には全身麻酔です。

ただの肘のオペなのに「なぜ全身麻酔?」思われるかも知れませんが伝達麻酔等の局所麻酔だと効きにくい場所なのです。全身麻酔というと怖がる方もいらっしゃいますが”何か”起こったときは全身麻酔の方が安全です。

オペの時間はオペ出し(病室からオペ室へ運ばれること)から2時間程度のものです。一晩のみ入院して何も無ければ翌日帰宅できます。

尺骨神経前方移行術は他のオペとは違いかなり早くから患部を動かさなければなりません。傷が塞がったらすぐくらいからです。私は、次の日には動かせと指示されました。それには理由があります。肘部管から遊離させた尺骨神経は皮膚の下で”フリーな状態”ですがすぐに動かさなければまた癒着しまた神経を圧迫してしまいます。その再度の癒着を防ぐためにも早期の運動が必要になるのです。

尺骨神経は長い間圧迫を受けていると変性してしまいます。手術を受けたからといってたちどころに治るわけではありません。”とりあえず悪くなるのを防ぐことが出来た”ということを実感しています。患者様は理解されていると思いますがこれだけでも全然違う毎日を過ごすことが出来る幸せを感じます。

尺骨神経前方移行術の麻酔について

私の場合は、なんとも不摂生が祟りオペ当日は風邪をこじらせてしまいました。それが何を意味するのか?そう全身麻酔が出来ない!という非常によくないことを意味するのです。ではどうしたものか?「伝達麻酔」をかけます。しかしここには大きな問題が。

尺骨神経を触る手術ですのでその周辺が麻酔にかからなければいけないのですが伝達麻酔である斜角筋間ブロックは、このオペの場合は不向き。なぜならただでさえ肘部の麻酔が効きにくい中で尺側はさらに効きにくい。

斜角筋間ブロック ( interscalene BPB )は、首の根元の前斜角筋の奥の神経に注射して効いてくるのを待ちます。15分程度で効いてくるのですがいざメスを入れると明らかに痛みが走ったりします。これが効いていない状況ですね(笑)そんなときは肘に直接患部に局所麻酔を追加します。

くれぐれも全身麻酔でオペ出来るよう体調管理はしっかり行ってくださいね。

全身麻酔
静脈注射ないしガスの吸入によって中枢神経に薬物を作用させる。多くの全身麻酔では中枢神経系の機能を抑制したり、大脳新皮質を解離させたりして意識を可逆的に失わせるが、NLA(英語 Neurolept anaesthesia の略)では意識を保った麻酔も可能である。筋弛緩を伴う吸入麻酔の際は人工呼吸器が必須であり、気化器と一体になった麻酔装置(麻酔器)が用いられる。
局所麻酔
麻酔薬を局部に作用させ末梢神経の活動を抑える。投与法、遮断部位によって表面麻酔、浸潤麻酔、周囲浸潤麻酔、伝達麻酔に分けれられる。
 
伝達麻酔
末梢神経束を局所麻酔薬でブロックするものである。ペインクリニックで行う神経ブロックはこれを用いている。